私と言葉と麻績と

長野県東筑摩郡麻績村。「麻を績む」と書いて「おみ」。発見のメモ帳。

人の家にお邪魔するとついつい本棚を見てしまう

 某方のブログにも書いてありましたが、とてもわかる。 

 長野にきて一年。実家に置いてきてしまった本たちが無性に恋しくなって、Amazonで検索して表紙を眺めたりなどしています。

 本は油断するとすごい荷物(しかも重い)になるので恐ろしい。

 私の場合は趣味(ほんと趣味)で物書きなどをしたりするので、本棚は資料系の本が多いです。小説を一番読んでいたのは中学校の頃かな。ファンタジーが好きでした。

 あと、今でも漫画はめちゃくちゃ読みます。親世代から現在のもの、コメディからシリアスまで、少女漫画も少年漫画も。俗に言うオタクです。ええ。

 今は「GUNSLINGER GIRL 」という漫画を読んでいます。漫画は最近もっぱら電子書籍民になりました(かさばるので)。

 そんな私が最近読み返したくて仕方ない本たち。

色―世界の染料・顔料・画材 民族と色の文化史

色―世界の染料・顔料・画材 民族と色の文化史

 

  表紙に一目惚れして買った本。広く浅く、色と民族の関わりを解説しています。フルカラーで写真が美しい。

 色から受けるイメージがある程度万国共通していることは、なんというか不思議で、すごいことだなあと思います。

 生きる土地や言語が違っても、共通した因子が組み込まれてるってことですよね。すごい(語彙)

 

色彩論 (ちくま学芸文庫)

色彩論 (ちくま学芸文庫)

 

  

色を奏でる (ちくま文庫)

色を奏でる (ちくま文庫)

 

 幼い頃から「色」が好きで(どこがどう好きなのか問われるとうまく言えないのですが)。そんな色を、現象と哲学、学問と感性を交えて読み解く二冊。

 黄色と青を混ぜると緑になる。その現象に、意味を見出します。

 黄は「生」の色、青は「死」の色。その間に生まれる緑は生と死の間に存在する不安定な「いのち」をあらわす、といったように。

 日本語では生まれたばかりの子供を「嬰児(みどりご)」といったりしますよね。

 色と日本語密接な関係も、とても好きです。

 志村ふくみさんのご著書は、私が草木染めと機織りに興味を持つきっかけをくださった一冊でもあります。

ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)

ひらがなでよめばわかる日本語 (新潮文庫)

 

  おそらくこのブログでなんども引用することになるであろう一冊。

 日本語をひらがなにすると、見えてくることがたくさんあるんです。

 音が同じ言葉には何か繋がりがあるのかも、と思うと、身の回りの言葉に自然と興味を向けることになります。

 先述の色と絡めると、「あか」は「明」であるし、「黄」は「生(き)」であるし。

 あと、花と人間はよく似ている、とか。「芽」と「目」、「実」と「耳」、「花」と「鼻」といった風に。昔の日本人が、花と自分の姿を重ねていたようにも感じられて、面白い。

  私が大学での専攻を言語学にしたきっかけをくれた一冊でもあります。

美人の日本語 (幻冬舎文庫)

美人の日本語 (幻冬舎文庫)

 

  365日それぞれに、美しい日本語を当てはめた一冊。1ページに一語。

 その日の言葉を見るもよし、自分の誕生日の言葉を見るもよし、適当に開いて見るもよし。開くたびに新たな発見と出会いがあります。

 同作者さんの暦の本もおすすめ。

 

 って書いたところで今手元にはないので、フラストレーションがたまります!笑

 実家に帰って存分に本と漫画を堪能したーい!

あなたは「とてっきょ」を知っていますか

四月の雪

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  全国的に季節外れの雪が降った日だったそうで。麻績村も例に漏れず雪が降りました。去年の今頃にも雪が降って、長野にきたばかりの私はたいそう驚いた記憶があります。

 桜が咲いていなかったのは幸か不幸か。つぼみたちが、雪に抗うように紅潮していてあいらしい。もう少しで開花かな。

旬のお料理をいただくだけの簡単なお仕事

 今年の私の担当業務のひとつは「おみごと文庫」の取材と編集。村の方々と協力して一冊の本を作ります。

 今年のテーマは「麻績の昭和の生活と季節食」。

 麻績のおばさま…もとい「おみばーば」のみなさまと一緒に、麻績の素材をたっぷり使用したお料理のレシピ本をつくります!

 つまり、業務内で旬の料理をいただけるということなのです…なんという役得……。

 本日は第一回目の調理。春の料理をいただきます。山菜は前日に採りに行きました!

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 じゃじゃーん。

「とてっきょ」ってなんですか?

 本日使用した山菜は、フキノトウ、ウド 、クジナ(たんぽぽ)、ネゼリ。

 その中に紛れ込む謎の山菜……「とてっきょ」。「ホーホケキョ」みたいな謎の響き。

 その正体は「野萱草(のかんぞう)」と呼ばれる山菜。一見ただの草だ…。

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 でもこれが、癖がなくておいしい。特に酢味噌和えが絶品。

豪華すぎる昼食

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 圧倒的な贅沢。山菜のてんぷら、蕗味噌、とてっきょやうどの酢味噌和え、ネゼリやクジナのエゴマあえ、桜餅におだんご、五目寿司。

 美味しくいただきました(合掌)

 もちろん取材写真も撮りました!

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 美味しい食べ物を美味しそうに撮るのは、思いの外難しい。

結局「とてっきょ」の語源はなんなんだ

 「とてっきょ」の原型と思われる呼び方は「とてこっこ」。

 「とてこっこ」は「こけこっこ」と同義で、どうやら鶏(ひいてはトサカ)を指すようです。

 ノカンゾウの芽吹きの様子を、鶏のトサカに見立てて「とてこっこ」。

 「とてこっこ」が変化して「とてっきょ」になった模様。

 「totekokko」から「totekkyo」…。私は方言専攻でないので音便変化には疎いのですが、気になる変化だなと思いました。そしてなにより響きがかわいい。

 春の恵みをいただくと同時に、素敵な言葉にも出会った一日でした。

 

 次回はコシアブラやタラノメ、コゴミを使う予定です。

 

参考:とてこっこ・飛騨方言

   とてこっこ ‥ヤブカンゾウ

織りと祈りはどこかにている

毎週月金は機織りの日です。

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団体名は「聖 夢工房(ひじり ゆめこうぼう)」。公民館の一室をお借りして、村民の方々と機織りをしています。

素材は絹、ウール、木綿、麻。できるのはストールやマフラー、膝掛け、のれんなど。

冬場と春先は農閑期なのもあり、みなさん精が出ます。

私が去年の四月に初めて来た頃は、半分くらいお茶会だったのですが。笑

今では食事もそこそこに、午前中だけだった作業時間はほぼ一日に。

朝から夕方まで、ひたすらに。

 

 麻績村と機織り

 麻績村は、養蚕が盛んに行われた地域でもあり、一昔前まで、どこのお家にも織り機があって、屑糸で着物などを織っていたそうです。

 村のあちこちに桑の木が生え、古いお家にはお蚕様を飼っていた名残が見られます。

 今では織り機も、倉の奥底で眠っていたり、燃やされてしまったり。

 だからこそ、こうして織り機に触れられる機会は、とても稀有で尊いものであると感じています。

 夢工房で使用している織り機は、近隣市町村の方々から譲っていただいたものです。

 

「おる」という日本語

 「織る(oru)」とは「祈る(inーoru)」「守る(mamーoru)」に通ずるもののような、気がします。
 古来より着物に用いられてきた絹は、蚕が自らの身を守るためにつくった繭よりうまれます。
 またそのまま、着物というのはからだを守るものです。
 そして、誰かが誰かを守るために、織るものです。
 日本語のみなもとを辿ると、蜘蛛の糸のように複雑に絡み合い、けれど理論だって存在する、世界の摂理、のようなものに触れる心地がします。すごい、なんて世界はうまくできているんだろうと、思います。

地域おこし協力隊二年目

 四月一日に委嘱を受け「地域おこし協力隊」二年目の活動がはじまりました。

 私の担当は

・伝統工芸(機織り、草木染、紙漉き)のサポート

・おみごと文庫の編集

・「ふるさとCM大賞」の動画制作

 です。

   *

 麻績の四季がすきです。

 透き通った空。彼方に望む北アルプス。眼下の雲。

 一斉にはなひらく桜と梅、杏、花桃。日に日にぬくもっていく陽光。春。

 水田のきらめき。採れたて野菜の瑞々しさ。高原の緑。夏。

 千変万化する山々。穂が織りなす金色の海。西日の色。秋。

 満点の星空。こごる吐息の白さ。聖湖の凄絶なるうつくしさ。冬。

 ひとの、あたたかさ。

 

 「地域おこし」はとても、むつかしい。

 けれどただただ「知ってほしい」と思います。私の大好きなもの、大好きな場所、大好きなひとたち。できれば直で見て、感じてほしいとも、思います。

 そのために、というわけではないけれど、協力隊として最後の一年は記録をつけることにしました。

 よろしくお願いいたします。